GKは権田がシュミットとの争いを一歩リード リーダー吉田の相棒争いは再び混沌

 森保一監督が就任した日本代表は、初陣となった昨年9月のコスタリカ戦から直近のカタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選タジキスタン戦まで23試合を戦ってきた。

 多くの選手を起用し、様々なトライをしながらチーム作りを進めているなか、各ポジション内での最新パワーバランスはどのような状況になっているのか。招集全68人をポジション別に分け、5段階評価(不動/スタメンクラス/バックアッパー/成長株/未来枠)で見ていく。

【序列内の記号/上から下へ序列高い順】
◎=不動
○=スタメンクラス
△=バックアッパー
☆=成長株
◇=未来枠

■GK
◎ 権田修一(ポルティモネンセ)
〇 シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)
△ 川島永嗣(ストラスブール)
△ 東口順昭(ガンバ大阪)
△ 中村航輔(柏レイソル)
☆ 大迫敬介(サンフレッチェ広島)
◇ 小島亨介(大分トリニータ)

 コパ・アメリカ(南米選手権)までは唯一不動を言える存在のいないポジションだった。しかし、権田がシュミットの怪我で急遽先発した9月のパラグアイ戦から4試合連続でクリーンシートを達成し、頭一つ抜け出した感がある。シュミットは「ゴンちゃんはずっと無失点だし、替える理由もないと思う」とし、来たるチャンスに備える胸中を明かしている。大ベテランの川島の継続招集されているなか、リオ五輪世代の中村、コパ組の大迫と小島の突き上げもほしいところだ。

■CB
◎ 吉田麻也(サウサンプトン)
〇 冨安健洋(ボローニャ)
〇 植田直通(セルクル・ブルージュ)
〇 昌子 源(トゥールーズ)
△ 畠中槙之輔(横浜F・マリノス)
△ 槙野智章(浦和レッズ)
△ 三浦弦太(ガンバ大阪)
◇ 立田悠悟(清水エスパルス)

 ディフェンスリーダー吉田の相棒は進境著しい冨安に固定されつつあったなか、モンゴル戦で冨安が負傷離脱して再び“もう一枠”の争いは混沌。タジキスタン戦にフル出場した植田は、ピンチこそあったが最終的に無失点で切り抜けている。今季は怪我がちな昌子を含めて競争は続くだろう。バックアッパーでは、今年3月から継続招集されている畠中が、現段階では槙野や三浦よりも上に立った印象がある。

安西がバックアッパーとして対応 ボランチの一角は遠藤と橋本が一騎打ち

【序列内の記号/上から下へ序列高い順】
◎=不動
○=スタメンクラス
△=バックアッパー
☆=成長株
◇=未来枠

■右サイドバック
◎ 酒井宏樹(マルセイユ)
△ 冨安健洋(ボローニャ)
△ 安西幸輝(ポルティモネンセ)
△ 室屋 成(FC東京)
△ 西 大伍(ヴィッセル神戸)
◇ 岩田智輝(大分トリニータ)
◇ 原 輝綺(サガン鳥栖)

 酒井の一番手は変わらず不動。左サイドバック同様、レギュラーを脅かす選手がいないのが懸念材料だが、森保監督は9月のパラグアイ戦でセンターバックの冨安を後半からセンターバックで起用する采配を見せた。対戦相手によっては、最終ラインの大型化を図るうえでも“SB冨安”はオプションとして定着するかもしれない。酒井が負傷交代したモンゴル戦では、安西が出場4試合目にして初めて右サイドでプレーしており、室屋とのバックアッパー争いを優位に進めつつある。

■左サイドバック
◎ 長友佑都(ガラタサライ)
△ 安西幸輝(ポルティモネンセ)
△ 佐々木翔(サンフレッチェ広島)
△ 山中亮輔(浦和レッズ)
☆ 杉岡大暉(湘南ベルマーレ)
△ 車屋紳太郎(川崎フロンターレ)
◇ 菅 大輝(北海道コンサドーレ札幌.)

 長友の一極化は顕著だが、ポルトガルで研鑽を積む安西が代表定着に向けてアピール。コンスタントに招集されている選手が不在のなかで、バックアップ1番手候補に名乗りを挙げている。東京五輪世代の主力である杉岡が、今度どこまで競争に食い込んでこれるかも、チーム力の底上げという意味では重要なポイントだろう。

■ボランチ
◎ 柴崎 岳(デポルティボ)
〇 遠藤 航(シュツットガルト)
〇 橋本拳人(FC東京)
☆ 板倉 滉(フローニンゲン)
△ 塩谷 司(アル・アイン)
△ 青山敏弘(サンフレッチェ広島)
△ 守田英正(川崎フロンターレ)
△ 小林祐希(ワースラント=ベベレン)
△ 三竿健斗(鹿島アントラーズ)
△ 山口 蛍(ヴィッセル神戸)
△ 大島僚太(川崎フロンターレ)
◇ 中山雄太(PECズヴォレ)
◇ 渡辺皓太(横浜F・マリノス)
◇ 松本泰志(サンフレッチェ広島)

 橋本の台頭で柴崎の相棒争いが激化。アジアカップ以降は故障で招集が見送られていた遠藤もモンゴル戦で代表初ゴールを決めており、フィジカルの橋本、バランスの遠藤と対戦相手によって使い分けるイメージか。1トップと同じく、候補は多くいるが、他の選手は決定打に欠ける印象は否めない。コパ・アメリカでA代表デビューを飾り、9月のパラグアイ戦に出場している板倉は、サイズと展開力、センターバックにも対応可能なユーティリティー性を考えると今後も招集が見込まれそうだ。

右サイドの「堂安vs伊東」が白熱 久保は右サイドハーフ、トップ下のいずれも4番手か

【序列内の記号/上から下へ序列高い順】
◎=不動
○=スタメンクラス
△=バックアッパー
☆=成長株
◇=未来枠

■左サイドハーフ
◎ 中島翔哉(ポルト)
△ 原口元気(ハノーファー)
△ 浅野拓磨(パルチザン)
△ 乾 貴士(エイバル)
◇ 安部裕葵(バルセロナB)

 中島の個で打開する力は、現体制の攻撃においては不可欠だ。守備面で課題を残すのも事実だが、そこは攻守のバランス感覚や運動量に優れた原口で穴埋めする算段だろう。タジキスタン戦では1トップではなく左サイドハーフに配した浅野が、酒井宏樹のクロスに飛び込み、豪快なヘディング弾で2年ぶりのゴールを決めた。浅野のサイド起用はオプションとして加わってくるかもしれない。

■右サイドハーフ
〇 堂安 律(PSV)
〇 伊東純也(ヘンク)
△ 原口元気(ハノーファー)
☆ 久保建英(マジョルカ)
△ 宇佐美貴史(ガンバ大阪)
☆ 三好康児(アントワープ)
◇ 伊藤達哉(シント=トロイデン)

 現時点では堂安が伊東を上回るが、伊東もモンゴル戦で3アシストを記録するなど目覚ましい活躍を見せており、一時期ほど堂安にアンタッチャブル感はない。中島のバックアッカー役である原口も、西野体制では右サイドハーフを務めていただけに、両ポジションで序列に加わってくる可能性は十分ある。18歳の久保は期待値が大きい反面、試合が決した場面で投入するW杯予選での起用法を見ると、プレー時間獲得にはさらなる信頼の獲得が必要と言えそうだ。コパ・アメリカのウルグアイ戦で衝撃の2ゴールを叩き込んだ三好が競争に食い込んでくれば一層面白くなる。

■トップ下
◎ 南野拓実(ザルツブルク)
△ 香川真司(サラゴサ)
△ 鎌田大地(フランクフルト)
☆ 久保建英(マジョルカ)
△ 北川航也(SKラピード・ウィーン)
△ 天野 純(ロケレン)

 定位置を確保している南野は、W杯予選開幕3戦連続ゴールという偉業を達成するなど絶好調。森保ジャパン最多の10ゴールを挙げており、中島と並ぶ攻撃の軸として不動の地位を築く。サラゴサ移籍で試合勘を取り戻してきた香川が完全に代表復帰した際、競争に変化が生まれるのか見ものだ。タジキスタン戦でトップ下として評価を上げたのが、鎌田だ。持ち前の技術を生かして、両サイドに巧みにボールを散らし、攻撃を活性化させた。トップ下の適性も高い久保は、現段階では4番手と見るのが妥当か。

“ポスト大迫”の有力候補が不在 トップ下の南野は1トップでもプレーできることを証明

【序列内の記号/上から下へ序列高い順】
◎=不動
○=スタメンクラス
△=バックアッパー
☆=成長株
◇=未来枠

■1トップ
◎ 大迫勇也(ブレーメン)
△ 永井謙佑(FC東京)
△ 南野拓実(ザルツブルク)
△ 鎌田大地(フランクフルト)
△ 浅野拓磨(パルチザン)
△ 鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)
△ 岡崎慎司(ウエスカ)
△ 武藤嘉紀(ニューカッスル)
△ 小林 悠(川崎フロンターレ)
△ 杉本健勇(浦和レッズ)
△ 川又堅碁(ジュビロ磐田)
△ 鈴木優磨(シント=トロイデン)
☆ 上田綺世(鹿島アントラーズ)
◇ 前田大然(マリティモ)

 絶対的な存在の大迫と、それ以外の選手の差が激しい。“ポスト大迫”の有力候補が不在のなか、スピードタイプの永井が試合で結果を残し、南野もタジキスタン戦で1トップにポジションを移してから2ゴールを決めている。大迫不在時には両者をベースに、鎌田や浅野、鈴木武蔵らを状況に応じて起用していくことになりそうだ。(Football ZONE web編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)